手形貸付とは?メリットやデメリット、証書貸付などとの違いをわかりやすく解説!

手形貸付とは?メリットやデメリット、証書貸付などとの違いをわかりやすく解説!

手形貸付とは、約束手形を担保にして金融機関からお金を借入れる方法です。

手形貸付は短期融資であり、つなぎ融資や短期運転資金を調達したい場合に多く利用されています。ただし、約束手形は2026年に廃止される予定です。そのため、証書貸付や当座貸越など、ほかの資金調達方法を検討する必要があります。

本記事では、手形貸付の仕組みやメリット、デメリット、手形貸付以外でお金を借入れる方法などを紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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目次

手形貸付とは?融資を受ける仕組み

手形貸付とは、金融機関から融資を受ける方法の一種で、約束手形を担保にする点が特徴です。

なお、約束手形は、振出人(借主)が受取人(金融機関)に対し、期日に一定金額を支払うことを約束する有価証券です。金融機関が保管し、返済完了後に借主に返却されるか、破棄されます。

手形は物理的な紙であり、紛失や盗難のリスクがあるため、近年では「電子記録債権」を利用する事例も増加しています。

手形貸付は約束手形を担保にして融資を受ける方法

手形貸付において融資を受ける際は、担保として約束手形が必要です。約束手形は、「この期日までに、この金額を約束手形と引き換えに支払う」と約束する有価証券で、主に以下の内容が記載されます。

  • 支払期日
  • 手形支払地(銀行名、所在地)
  • 手形の受取人
  • 手形の振出人
  • 手形振出日、振出地
  • 金額

約束手形の発行は「約束手形を振出す」とも表現され、発行する側を「振出人」、受取る側(金融機関側)を「受取人」と呼びます。

約束手形を担保としてお金を借入れ、約束した期日に振出人の当座預金口座から引落すことによって返済が実行される仕組みです。

手形振出人は、支払期日までに約束手形に記載した金額を当座預金口座に振込む必要があります。また、融資を受けるためには、事前に当座預金口座を開設しなければいけません。

当座預金は普通預金と異なり、口座を開設する際に審査が実施される点に注意が必要です。

手形貸付は原則1年以内の短期融資

手形貸付の特徴は、原則1年以内に返済する短期融資である点です。

できるだけ急いでお金を工面して、早めに返済したい場合に利用されています。長期間で少しずつ返済したい場合は、別の方法でお金を借入れましょう。

住宅ローンのつなぎ融資

注文住宅で住宅ローンを利用するためには、家が完成していなければいけません。

しかし、土地の購入代金や手付金、着工金、中間金など、家が完成するまでにお金を支払わなければいけないタイミングは複数あります。

これらの費用を捻出できない場合に多く利用されている方法が、手形貸付によるつなぎ融資です。

つなぎ融資を受けて、家が完成後に住宅ローンの借入れが実行されると、つなぎ融資と残金が精算される仕組みです。

短期継続融資(短コロ融資)

手形貸付の書き換えを活用した「短期継続融資(短コロ)」で、中小企業が運転資金の融資を受けるケースもあります。短コロとは「短期転がし」という意味で、「コロガシ融資」と呼ばれる場合もあります。

かつては、不良債権化するおそれがあるという理由により、利用が減少した手法です。しかし、金融庁が正常運転資金の範囲内なら問題ないという見解を示しているため、柔軟に対応できる融資方法として見直されています。

手形貸付の利息を支払うタイミング

手形貸付の場合、通常、期日までの利息を借入金額から控除する形で、借入時に一括で支払います。金利は金融機関ごとに異なります。負担を軽減したい場合は、複数の金融機関を比較して、金利が低い金融機関を選びましょう。

具体例として、「借入金額100万円、金利(年利)5%、半年後が期日」のケースの、借入時に実際に確保できる金額を計算する手順を示します。

この場合、利息は、1,000,000円×0.05÷2=25,000円です。そのため、借入時に実際に確保できる金額は、1,000,000円-25,000円=975,000円と算出されます。

手形貸付で融資を受けるメリット

お金を渡す男性

お金を借入れる方法として手形貸付を選択するメリットには、以下の3つの点が挙げられます。

  • 審査から資金調達までが早い
  • 印紙税の負担を抑えられる
  • 短期の資金繰りに利用しやすい

それぞれに関して詳しく解説します。

審査から資金調達までが早い

手形貸付は、約束手形を担保にするため、審査項目が少ないことが特徴です。

審査に通過した後の事務手続きが少なく、スムーズにお金を借りることが可能です。

ただし、当座預金口座の開設に時間を要する場合があります。手形貸付の利用を検討している方は、早い段階で当座預金口座を開設しましょう。

印紙税の負担を抑えられる

約束手形を振出す際に印紙が必要になることは、金銭消費貸借契約書と同じですが、印紙税額が異なります。

書面に記載された金額が同じ場合、約束手形のほうが印紙税額の負担を抑えられることが多いです。約束手形に記載された手形金額と印紙税額の関係を下表にまとめました。

約束手形に記載された手形金額 印紙税額
10万円未満 非課税
10万円以上、100万円以下 200円
100万円超、200万円以下 400円
200万円超、300万円以下 600円
300万円超、500万円以下 1,000円
500万円超、1,000万円以下 2,000円
1,000万円超、2,000万円以下 4,000円
2,000万円超、3,000万円以下 6,000円
3,000万円超、5,000万円以下 10,000円
5,000万円超、1億円以下 20,000円

(※)出典:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

また、金銭消費貸借契約書に記載された契約金額と印紙税額の関係は下表のとおりです。

金銭消費貸借契約書に記載された契約金額 印紙税額
1万円未満 非課税
1万円以上、10万円以下 200円
10万円超、50万円以下 400円
50万円超、100万円以下 1,000円
100万円超、500万円以下 2,000円
500万円超、1,000万円以下 1万円
1,000万円超、5,000万円以下 2万円
5,000万円超、1億円以下 6万円

金額が1億円を超えるケースに関しては、国税庁公式WEBサイトをご覧ください。

(※)出典:国税庁「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」

また、金銭消費貸借契約書の場合は、借主および貸主の双方の契約書に印紙が必要です。ただし、双方が保有する目的で2部発行した場合(正本が1部、片方がコピーを所有する場合)は、コピーに印紙は不要です。

紙で契約書を発行する際の印紙代を節約できる点も、手形貸付で融資を受けるメリットでしょう。

短期の資金繰りに利用しやすい

手形貸付は、半年~1年程度の短期間における資金繰りを目的とするのであれば、比較的利用しやすい方法です。

ただし、返済期日が近く、期日に元金の一括返済を求められるため、長期的な資金繰りの手段としては適していません。ロールオーバー(借換え)が可能な場合もありますが、金融機関から拒否される潜在的なリスクがあるため、依存することは危険です。

手形貸付のデメリット

手形貸付には、以下に示すデメリットもあります。

  • 長期間の融資は難しい
  • 約束手形の額面以上の融資は不可
  • 期日までに返済できなかった場合のリスクが大きい
  • 高い信用度が求められる

それぞれに関して詳しく解説します。

長期間の融資は難しい

手形貸付は原則1年以内の短期融資なので、長期の借入れには不向きです。

短期継続融資(短コロ)で継続融資を受けることが可能な場合もあります。ただし、約束手形を振出すたびに印紙税がかかるため、継続を繰返すほどコストが増大する点に注意しましょう。

約束手形の額面以上の融資は不可

手形貸付では、振出した約束手形に記載されている金額以上の融資を受けられないため、場合によっては十分な融資額ではない可能性があります。

ただし、約束手形の金額に上限がないからといって、むやみに高い金額を記載した約束手形を振出すべきではありません。

支払期日までに当座預金口座へ額面以上の残高を用意しなかった場合、不渡りとなり金融機関からの信用を失う恐れがあります。その結果、取引停止措置が講じられ、現金取引しか不可能な状態に陥ることがあります。

期日までに返済できなかった場合のリスクが大きい

手形貸付で借入れた資金の全額を、期日に返済できていない状態を「不渡り」と呼びます。不渡りが発生すると、その事実が全国の金融機関に共有され、新たに資金を借入れることが困難な状況に陥ります。

取引先に知られた場合は、前払取引を余儀なくされたり、取引を停止されたりして、営業を継続できない事態に陥るかもしれません。

また、半年以内に2回の不渡りが発生すると、当座預金口座を利用した取引が2年間停止され、倒産に追い込まれる可能性があります。

高い信用度が求められる

手形貸付は短期間での一括返済が前提のため、借入れるためには高い信用度が求められます。

金融機関が「短期間に一括で返済する能力がない」と判断した場合は、借入れできません。申込んでも、必ず借入れできるわけではないことを認識しておきましょう。

手形貸付でお金を借りる手順

手形貸付でお金を借入れる際の手順を以下に示します。

  • 金融機関を選定する
  • 金融機関の決定後に必要書類を提出し、借入れを申込む
  • 提出書類の内容などを踏まえて審査が実施される
  • 審査に通過できたら、契約を締結する
  • 期日までの利息が控除された額が入金される

日頃付き合いのない金融機関などでは、手形貸付を利用できないケースが多く見受けられます。

申込みの際は、所定の約束手形や本人確認書類などが必要です。金融機関によっては窓口に加えて、オンラインでも申込みが可能な場合があります。

紙の約束手形は2026年に廃止される方針

紙の約束手形は、2026年に廃止される方針です。

約束手形による支払方法は、現金化するまでの期間が長い傾向にあります。そして、支払期限前の割引料が高く、資金繰りを苦しくさせていることが、廃止される理由です。

全国銀行協会は、「2026年度末までに全国の手形交換所における手形交換枚数をゼロにする」という内容の自主行動計画を策定しました。自主行動計画を踏まえて、さまざまな金融機関が廃止に向けて対応を進めています。

近い将来に約束手形が廃止されることを見据えて、手形貸付以外の資金調達方法に移行することを検討しましょう。

(※)出典:経済産業省ウェブサイト中小企業庁「紙の約束手形、やめませんか?」

電子記録債権などへの移行が進められている

紙の約束手形を2026年に廃止する方針が経済産業省によって示され、さまざまな金融機関が手形の発行業務を終了しています。

そして、廃止後の代替手段として「電子記録債権」などへの移行が進められています。電子記録債権とは、手形の代わりに電子的に記録される金銭債権です。電子債権記録機関の記録原簿に記録され、発生や譲渡が管理されます。この制度は「電子記録債権法」によって創設されました。

手形貸付と証書貸付・当座貸越・割引手形の違いを解説

机の上に開いておかれたリング式のシステム手帳、電卓、福沢諭吉の肖像の一万円札紙幣

手形貸付以外にも、証書貸付や当座貸越、割引手形といった資金調達の方法があります。

それぞれの特徴を下表にまとめました。

融資方法 特徴
手形貸付
  • ・約束手形を差し入れて融資を受ける
  • ・返済期間1年以内の短期融資に適している
証書貸付
  • ・金銭消費貸借契約書を差し入れて融資を受ける
  • ・返済期間1年を超える長期融資に適している
当座貸越
  • ・審査によって極度額が設定される
  • ・極度額の範囲内で自由に融資や返済を実施する
割引手形
  • ・約束手形を銀行に買い取ってもらう
  • ・不渡りの状態に陥ると買い戻しの義務が発生する

手形貸付のメリットである「スムーズに借入れできる」という点に関して似た特徴をもつのが、当座貸越です。

当座貸越では、審査によって極度額が設定されると、その範囲内でいつでも融資や返済を自由に繰り返せます。

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(※3)お申込み時間帯や審査状況によりご希望にそえない場合があります。

手形貸付以外の資金調達方法を上手に活用しよう

手形貸付は、約束手形を担保にして金融機関からお金を借入れる方法です。メリットは、スムーズに融資を受けられる点です。

ただし、長期融資が難しく、2026年に約束手形が廃止される方針が示されています。そのため、ほかの方法で資金を調達することも検討しましょう。

たとえば、当座貸越なら、審査を受けて極度額を設定しておけば、極度額の範囲内であれば自由に繰返し借入れや返済が可能です。

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