

荒波を越えて見据える高み。独立系アイフルグループの経営戦略とM&A、海外展開

「IT企業への変革」を長期ビジョンに掲げ、消費者金融にとどまらず多角的に事業を展開するアイフルグループ。アイフルの常務執行役員 海外事業部統括 兼 経営戦略部・法人管理部担当の堂本 顕孝が、独立系グループの特性を生かして推進するM&Aや東南アジアへの進出など、既存の枠を超えた厳しい挑戦と展望を語る。
掲げるのは「IT企業への変革」。ITで効率を追求し、利益水準を引き上げる

消費者金融をはじめクレジットカード事業やSESなど、幅広く事業を展開するアイフルグループ。基本方針や注力する「多様性の実現」について堂本が説明する。
「グループ会社が現在21社と増えてきている中、新規ビジネスを育てることと、消費者金融など安定的に収益を上げている事業の収益を引き続き確保していくことが大きな柱です。また、当グループでは『多様性』を本気で実践し、約5,000人の従業員のうち、海外展開の会社を含めると約15%が外国人従業員です。国内でもデータアナリティクスやデジタル推進の分野で、タイのチュラロンコン大学やインド工科大学の出身者が働いています。新規のお客様は女性や20代が増加しており、プロダクトもその目線で考えていく必要があることから、女性や若手の登用を積極的に行っています。」
メガバンク系列ではなく独立系ならではの特性として、「機動力があり、意思決定が早いこと」を挙げる。
「1人の役員が管掌する範囲が広いため、3、4人の役員がいれば関連部署の話がほぼ完結します。系列のしがらみがなく既成概念にこだわらないので、過去にないペット保険やSESの会社も買収するなど、スピード感を重視し、積極的に動くカルチャーがあります。
デジタル化の取り組みも特徴的です。社内には専属デザイナーが約20人、データアナリティクスのメンバーは約70人、さらにはシステム会社の買収でエンジニアが約320人在籍しています」
中期経営計画で掲げる長期ビジョンは「IT企業への変革」。堂本は「ITをベースとした金融のプロダクトを提供する会社になることが、大きな目標」と語る。
「店舗をもとにしたビジネスから、スマートフォンを使ったプロダクト提供へと変わってきています。サービスを24時間365日提供する場合、オペレーションをIT化するなど従来よりもはるかに簡単な方法で、かつ望まれたタイミングで届ける仕組みをつくらなければお客様のニーズは満たせません。ITを駆使して効率を追求し、グループの利益水準を引き上げたいと考えています」
M&Aを推進して5社を買収。組織を鍛えながら険しい道を乗り越え、実績を残す

中期経営計画の基本方針として真っ先に掲げられているのが「M&Aの推進」だ。「3年間で最大600億円の投資」という計画のもと、2024年夏までの約1年半でSESの3社を含む計5社を買収した。現在も、毎月数十件の打診があると話す堂本。
「初期調査や検討を経て、可能性のある案件はプロジェクトチームを立ち上げて調査を深めていきます。1件の検討でも重い仕事で、社内にM&Aのノウハウがあまりない中、組織を鍛えながら実績を残しているところです。最初の数社は10億から20億円の規模でしたが、最近では100億円、200億円という規模の会社を対象としています。
この仕事ならではの厳しさもあります。新しい会社の知識や新たな常識を受け入れつつ、仮にわからないことがあっても形にして社内に伝えなければなりません。一生懸命調べたところで情報が間違っていたというケースもあり、そうなるとマイナスのインパクトとして会社に響きます。さらには財務や税務、会計、人事などの複合的な知識が必要で、担当者クラスも経営陣と同等の目線が求められます。
何十社と検討して険しい道を乗り越え、ようやく1社でM&Aが実現した際のうれしさは格別ですし、知識の面でも成長できると思います。私自身、かつて係長時代にライフカードの買収に携わった経験は今に生きています」
堂本は、今後も国内外問わずM&Aに積極投資する方針を示しつつ、その目的について次のように整理する。
「どこまで行っても目的は単なる企業買収ではありません。アイフルグループとして不足している事業領域を補完できるか、あるいは、将来的に取り組むべきビジネスのノウハウを獲得できるかを重視しています」
グループの成長を目指して海外進出。3カ国目のフィリピンには単独で新会社を設立

アイフルグループがもう一つ力を入れるのが、東南アジアを軸とした海外進出だ。2014年にタイで現地法人と合弁会社を設立し、翌年から消費者金融業を展開。2017年にはインドネシアで中古車オートローン事業の会社の株式を取得し、経営に参画してきた。その背景と現状を堂本が述べる。
「日本の経済成長が鈍化し就労人口が減る中、このままではグループとして大きな成長を望めません。そこで、日本と真逆の状態にある東南アジアに目を向け、蓄積してきたノウハウを生かして業績拡大を目指すことにしました。
コロナ禍明けの現状では、タイもインドネシアも経済状態が思わしくなく、金融ビジネスでは当グループを含め全体的に苦戦していると思います。ただ、新規ビジネスは苦労を重ねて改善を続け、課題やマーケットの変化に対応できた会社が成長していくものです。両社とも連日、新しいことを経験しながら模索を続けています」
さらに2024年8月にはフィリピンに新会社を設立。今後、個人向けの自動車・二輪車担保ローンなどの事業を展開する予定だ。
「進出した理由は、フィリピンの1人当たりGDPが伸びているほか、人口が1億人をすでに超えて若年層が多いことです。タイやインドネシアとは違ってアイフル単独で、情報収集も兼ねて進出しており、長期的な目線で今後を見据えています。現地には今、30代が1人、20代が2人という若い社員たちが駐在し、準備に奔走しています。
この事業を軌道に乗せることを目指しつつ、一方で、新たな国への展開も視野に入れて調査・検討を進めています。将来的にはアイフルグループの利益の2、3割を海外で上げられるようにならないと、と考えています」
与えられた場でどう行動するかが大切。唯一無二のエッジが効いた企業グループで飛躍を

若手社員に挑戦の場を積極的に与えるなど、成長機会を重視するアイフルグループ。堂本は「For Colorful Life」という理念に触れながら、若手に向けた想いを口にする。
「当グループは国内外にグループ会社があってビジネス、職種の選択肢が多く、どこかに自分が活躍できる場所を見つけられると思います。成長を目指す社員一人ひとりに対して人事部門などがサポートし、チャンスを与える文化も根づいています。
ただ、問われるのは『与えられた場でどう行動するか』で、利益を上げるなどの結果が求められます。また、社会人になればお金をもらう立場になり、責任が伴い、時間的に拘束されます。そのあたり、学生時代から大きく変わるということを認識しておいた方が、社会人として成功するのではないでしょうか」
グループが求める人材としては「アイフルの環境を使ってチャレンジし、自身を成長させたいと考えている人」と表現する堂本。
「現状に納得せず成長したいと考えている人が向いていると思います。自分の市場価値を高め、仮に転職しようとしたら各方面から話が舞い込むような人が理想的です。
学生の皆さんには、今しかできないことに全力を注いでほしいです。われわれ経営陣にも昔、バックパッカーをしていた人がいるのですが、今のうちに旅行や趣味、アルバイトなどで幅広く社会経験を積み、友人や知人と積極的に接してコミュニケーションのとり方を学ぶのが大切だと思います。
アイフルはひと味違う会社です。京都に本社があり、メガバンク系列や地方銀行とも異なる独自路線を歩んでいます。『唯一無二のエッジが効いた企業グループを一緒につくりたい』と思う人が来てくれるとうれしいです」