LTVが示す真の価値-見逃されがちなビジネスの盲点とは?

その他 / 新卒 / キャリア / データアナリティクス / 専門職 / 関東 / 関西

ビジネスをしていると、つい短期的な売上やKPIに目を奪われてしまいます。しかし、企業の成長を長期的に支えるには、「一人の顧客がどれだけの価値を企業にもたらすか」という視点が欠かせないことを知っていましたか?
今回は、その視点を数値化したもの「LTV(ライフタイムバリュー)」について徹底解説します!

顧客の本当の価値を見極める「LTV」という視点

LTVとは、「ある顧客が最終的に完済頂くまでに、自社にもたらす利益の総額」のこと。たとえば、月額1,000円のサブスクリプションサービスを3年間継続してくれる顧客がいれば、その人のLTVは約36,000円になります。もちろん、そこからマーケティング費や原価を差し引いて考えるのが正確ですが、まずは「長く・繰り返し」使ってくれる顧客の価値に目を向けることが大切です。
このLTVという考え方は、売上だけでなく「顧客との関係性」にフォーカスしているのが特徴です。短期的に一度だけ利用してくれた顧客よりも、継続的に取引してくれる顧客の方が、企業にとってはずっと価値が高くなります。つまり、LTVが高い顧客をいかに多く獲得し、維持していくかが、マーケティングの肝になるのです。

最近では、LTVを意識して「顧客単価 × 利用期間 × 利益率」で簡易的に試算し、それをベースに広告費を決めたり、CRM施策を設計する企業も増えています。また、SaaSやサブスクなどの定額モデルでは、LTVとCPA(顧客獲得コスト)のバランスを見ることで、ビジネスの健全性を測る指標としても活用されます。
自社のLTVを把握することは、さまざまな意思決定に役立ちます。LTVは、データをもとに「長期利用してもらうにはどうすべきか」「繰り返し利用してくれる顧客にどうやって来てもらうか」を考える武器です。データドリブンな意思決定を実現するうえでも、LTVの活用は今後さらに重要性を増していくと考えています。

次に、実際にどのような手順でLTVを算出するのかを簡単にご紹介します。
工程は全部で4段階、1つずつ順番に確認していきます。

1.要件定義と目的の確認

LTVは1商品につき1つしか作れないわけではありません。様々な切り口でみたり、シミュレーションの条件を変えることで、多様なニーズに応えることができます。目的に合った方法を探すためにも、まず最初に要件定義を行います。

2.データの収集と整備

次に行うのは、必要なデータの収集です。LTVは他の分析と比較しても、使用するデータの種類が非常に多いことが特徴といえます。取引開始から現在までの取引履歴や口座利用状況の変化に加え、営業経費データなど収支に関わる様々なデータを用います。これら複数のデータを顧客単位や商品単位に統合して、分析の下地を整えます。

     

3.LTV算出ロジックの構築

ここでは、LTVを計算する式を作成します。サブスク型や単発型・従量課金型など商品によって中身は異なりますが、「売上 – 経費」で求めた利益を顧客1人当たりに換算するという形が基本になります。一見簡単に見えますが、表面的なデータに現れない収益やコストが潜んでいることがあります。もれなく必要な要素を盛り込むには、ビジネスモデルの深い理解が必須です。

     

4.シミュレーションによるデータ補完とLTVの算出・検証

LTVでは長期間にわたるデータを元に算出しますが、十分な期間のデータが揃っていることは稀です。そのため、過去の実績から推定した予測値でデータを補完することが求められます。各指標ごとに整合性の取れた説得力のある予測ロジックを設計する必要があるので、ここがLTV算出における最も難しい部分の一つです。

これまでに構築したモデルやシミュレーションロジックを用いて、LTVを実際に算出します。算出結果は、顧客セグメントや商品別に傾向や分布を分析し、極端な値や整合性の取れない出力がないかをチェック・検証します。必要に応じて前提条件やモデルを調整し、最終版へと仕上げていきます。

   

グループデータアナリティクス部での取り組み

最後に、LTVに関する取り組み状況をご紹介します。
現在グループデータアナリティクス部では、各グループ会社のLTV算出に注力しています。LTVを把握することは、それぞれの収益構造を明らかにすることにつながり、事業の健全性を評価する重要な指標となります。

また、実際に施策を行う前に、LTVを用いた検証を行う機会が増えてきました。以前から、短期的な売上だけでなく、長期的な利益を重視する事が、当部の分析業務では意識されてきましたが、LTVという客観的で分かり易い指標が出来たことで、今後さらに長期利益重視の提案を増やせると考えています。

今後もLTVを活用することで、より良い顧客関係の構築と利益の最大化を目指していきます。

   
※記載内容は2025年6月時点のものです

STORIES一覧
関連記事
関連記事
ピックアップ記事