

「愛がいちばん。」女将CMをプロデュース ~CMプランナー・山崎隆明さん~

「愛がいちばん。」「そこに愛はあるんか?」などのインパクトのあるフレーズ、そしてユニークな「女将さん」と板前「今野」の掛け合いでお馴染みのアイフルCM。2018年の放映開始から幾度もCM好感度ランキングで上位に入る人気シリーズです。
このアイフルのCMを手掛けているのが、ワトソン・クリックの代表で、これまで数々のヒットCMを生み出してきたCMプランナーの山崎隆明さんです。今回はアイフルCMの誕生秘話、山崎さんの広告に対する思いや考えについてインタビューしました。
プロフィール
山崎隆明さん
クリエイティブディレクター/CMプランナー
株式会社ワトソン・クリック 代表取締役京都府生まれ。日大芸術学部卒業後、同年株式会社電通入社。シニアクリエーティブディレクターを経て、2009年にクリエーティブエージェンシー「ワトソン・クリック」を設立。
アイフル「凛とした女将シリーズ」、Life CARD「僕ら以上の僕ら。」(あのちゃん)のCMをはじめ、ホットペッパー「アフレコシリーズ」、サントリー「細マッチョ・ゴリマッチョ」、日清カップヌードル「替え歌CM」、アンファー「ミノキ兄弟」、TOTO「菌の親子」(ビッグベンとリトルベン)など数々のヒットCMを生み出す。その他、SMAP 「チョモランマの唄」、関ジャニ∞「Candy My Love」などの作詞・作曲も手がける。クリエーター・オブ・ザ・イヤー、TCCグランプリ、ACCグランプリ、広告電通賞、ロンドン広告賞など受賞歴多数。
上品で凛とした、意外性のある女将

▲「凛とした」を表現する女将役として、女優・大地真央さんをキャスティング
―ユニークな“女将さん”が登場するアイフルCMですが、そのモチーフはどのように生まれましたか?
凛とした登場人物、状況設定がいいなという思いは企画を考える前からありました。そこで、アイフルさんが京都の会社であることから、京の老舗料亭の女将さんという着想に行き着き、CM「女将シリーズ」の原型ができあがったんです。
実は僕も生まれが京都なので、自分が感じてきた古き良き京都の「品」や「凛とした」イメージを利用しながらメッセージが伝わるのはいいなと思いましたし、なんとなく記憶にある「あの店はまだ新しい、たかだか70年くらいどすえ…」と言うような(笑)、時にシニカルな印象を与える京女将は広告のキャラクターとしても愛嬌があり、ぴったりだと思いましたね。
キャスティングもそうした世界感を体現できる「凛とした」方、この業種の広告タレントとはかけ離れたイメージをお持ちの方を探しました。
▼女将さんと板前今野の初共演となった「試食」篇

CMイメージを変える。「愛がいちばん。」に込められた思い

▲「覚悟」と「勇気」を表した「愛がいちばん。」のメッセージ
―山崎さんにとってアイフルのCMは初めてのカードローン業種のCMだったと伺いましたが、当初の心境やCMに込めた思いを教えてください。
アイフルさんのCMを作るきっかけはコンペへの参加です。ただご依頼があったとき、正直これは難しい業種だな…と思いましたね。
当時のカードローンCMは、タレントや芸人さんがコミカルかつ陽気にサービス利用を促すものが多く、僕はいち視聴者としてその陽気に利用を促す感じに違和感があったんですね。「よかったらお金借りませんか?」と笑顔で近づいてこられると無意識に警戒するというか、ある種の胡散臭さを視聴者として感じたのかもしれません。アイフルのCMはそういう読後感にはしたくなかったので、同業他社の広告とはメッセージの質を変えることで、企業としての信頼感や親近感を高めるCMへイメージチェンジする必要があると感じていました。
サービスをセールスするのではなく、アイフルという会社が何を大切に思っているのかをセールスする。そうすることでお客様がこのサービスを必要と感じた時に思い出していただければ、CMの役割としては十分だと思いました。アイフルだけでなく、業界のイメージアップにもつながるようなものになるとベストだなと思った記憶があります。
そこでまず、企業を規定するスローガンが必要だと思い作ったのが「愛がいちばん。」というコピーです。
“アイ(愛)”が入る「アイフル」という社名とハートを表すロゴを見て、「愛」をキーワードにするのはどうかなと。アイフルという企業が「愛を大切に思っている企業」であることを堂々と言いきるのが格好いいなと思ったんです。プレゼン時に当時の社長(現会長)から「我々カードローンの会社が愛を語っていいものなのか?」と質問をいただいたんですが、愛は人間が生きていくうえで必要なものですし、企業にとっても不可欠なもの。「そこに愛はあるんか?」と常に自問自答し、「愛」を持って仕事と向き合うインナーワードとしても使っていただきながら、その積み重ねが企業の信頼感を醸成するのではないでしょうかと説明させていただきました。
アイフルという企業がこのメッセージを発信するのには「覚悟」と「勇気」が必要です。アイフルさんでないと採用してもらえなかったのではないかな、と思いますね。

同じ目線で臨む、一体感のある制作現場

▲女将のキャラクターや状況設定を自由にしたことで幅広い企画へと進化。
「カンフー女将」篇は放映後2ヶ月ほどで再生回数1000万回を超えた。
―アイフルのCM制作上で意識していることや現場の様子などについて教えてください。
「そこに愛はあるのか?」「愛がいちばん」というメッセージは正しいだけに、そのメッセージの伝え方には注意しています。決して上から目線にならずに、肩の力を抜いて見れる楽しさがある表現にしなければいけないと考えています。
ただし、面白ければいいというわけではなく、常に「アイフルのブランドがどう見えるか」を意識しながら微妙なさじ加減で企画を考えています。そこは女優の大地真央さんも同様で、いちいち言語化しなくても共有している感覚があり、「案は面白いけど、アイフルさんには良くないかも…」と言って面白い企画も平気で却下されます(笑)。常にアイフルさんや世間の反応を意識して、タレントとスタッフみんなで企んでいる仕事という感じですね。企画に関して基本的にはお任せいただいているのですが、以前に社長から共演者のキャスティングのアイデアをいただいたことがありました。何度かやんわりとお断りをしているのですが、あまり断ってばかりなのも申し訳ない気がして…。私はあまり気乗りしなかったのですが、一回だけ社長の意見を取り入れて実際に起用したところ、単発の面白さがあり話題になったんですね。時には意見を取り入れてみるものだと勉強になりました(笑)。
数年前に、ある甲子園球児の好きな言葉で「そこに愛はあるんか?」と紹介しているのをテレビで見た時、この言葉が世間に届いていることを実感しました。なかなか広告の言葉が届きにくい時代にこうしてメッセージを伝えられるのも、アイフルさんに自由度高くお任せいただいているからこそ…、本当にありがたいと思います。「ここで最大限に力を発揮してください」と言っていただいているようで、特に宣伝部の方にはいつも優しく見守っていただいていると感じています。
だからこそ、私には大きな責任があります。CMづくりの結果がアイフルさんに返ってくることを信じて、常に世の中を見ながら話題になるクリエイティブを創り出したいと思っています。

ありのままをチャーミングに
―長年広告に携わってきた山崎さんですが、広告に対する思いやお考えを教えてください。
まず、広告は見たくないもの、という前提を常に忘れないように心がけています。企画を立てるうえで注意していることは、嘘をつかないということですね。あとは、商品を褒めないこと。
広告自体が企業や商品を好きになってもらうためのフレームですが、口コミなど客観的な評価が可視化される時代に、そのフレーム内で自分で自分を褒める表現は視聴者の広告に対するネガな感情を加速させると思っています。
大切なのは、好意的に感じてもらえるよう「ありのまま」の姿を「チャーミング」に伝えること。企業は結局のところ人の集まり。だからこそ広告のコンセプトは、企業が人だったら…とキャラクター性を持たせたりしています。短所すら長所にもなり得ることを前提に、どう伝えれば企業(人)の魅力を届けられるかを意識しています。広告というのは、制作者がその時に世の中をどう思っているかが大きく影響します。不思議とヒットする広告は、制作者の個人の思いや趣味が入らないと生まれないことが多いんですよね…。クライアントの熱意に制作者の趣向が介在する突出したオリジナリティーが必要であり、それが広がっていくのを実感するのが広告の楽しさでもあります。
ただ、最終的にブランドを作る、広告を作るのはやはり企業の方々だと思っています。球児のエピソードのように「そこに愛はあるんか?」が届いたのも、その企画方針を決意してくださったことや、演者に対してCMに出たいと思わせる熱い想いを持つ、アイフルさんのブランドづくりの「覚悟」があったからだと僕は考えています。
▼SNSでも話題となっている現在放映中の「鮨屋の大将女将」篇(2024年12月~放映開始)

自分が知る、アイフルグループの魅力を伝えたい
―最後にアイフルグループの社員へメッセージをお願いします。
僕がアイフルグループと出会ってから7年ほど経ちます。お付き合いする年数が重なり、社員の皆さんをはじめ、サービスや環境などグループのことをどんどん知れて、点が線、そして膨らんでいるところです。さまざまな事業を展開し、これからも可能性に満ちた活気のある印象で、何より風通しが良いグループだなと社員の方々と接する度に感じています。僕はそこから感じた魅力を伝えられるよう、精一杯ブランディングのサポートをさせていただきたいと思っています。
僕の新たな挑戦として、CMとは別に業界的に停滞気味にあるデジタル広告を前進させる斬新的な取り組みをしたいと思っています。これまでのやり方に風穴を空けるつもりです。将来的には新たなデジタル広告の取り組みを通して、アイフルグループにも貢献できる表現を創り出したいですね。
~山崎さんがプロデュースしたアイフル・ライフカードCMはこちら!~
・アイフル CMコンテンツサイト
・アイフル 公式YouTubeチャンネル
・ライフカード 公式YouTubeチャンネル