

アイフルグループの命運を握るM&A。推し進める狙いと専門部署の覚悟

「IT企業への変革」を加速させるアイフルグループが今、最重点分野に位置づけるのがM&Aの推進である。担当するのは、2024年4月に新設されたばかりの経営戦略部。M&Aを推し進める理由や重視するポイント、さらにはグループの命運を握る仕事の重みについて、部長の田中健太が語る。
新設のM&A専門部署。ハードな局面を乗り越え、成立した時の喜びは大きく

M&Aの専門部署として新設された経営戦略部のミッションは、国内外問わず買収や提携を推進し、アイフルグループの利益と企業価値の向上を図ること。田中が、業務の概要や働く社員たちについて語る。
「まずはソーシング業務があります。ターゲットの業界や会社を検討した上で、将来的な候補をロングリストに、近い段階での候補をショートリストに登録し、相手の会社と交渉していく流れです。次に、エグゼキューション業務として、M&Aの交渉相手決定後からクロージングまでのプロセスがあり、M&Aが成立(クロージング)すれば、PMIプロセス(経営統合プロセス)に移行し、価値最大化に向けた各種テーマにグループ関連部門の方にもご協力いただき取り組みます。
在籍しているのは9人。うち課長2人は共にキャリア入社で、M&Aや経営管理の経験があります。ほかに証券会社の出身者や、当社の営業・人事やグループ会社のコーポレートベンチャーキャピタルの経験者、銀行からの出向者など多様な人材がそろっています」
M&Aに関し「3年間で最大600億円の投資」を宣言するアイフル。遂行を託されている経営戦略部に求められる役割は大きいが、乗り越えた時の達成感も格別だと言う。
「M&Aの流れや財務諸表への理解、企業分析など、幅広い知識や対応力が必要で、経営陣の意向を把握し動いていきます。また、相手が求めるデッドラインが明確で競合も存在する仕事です。複数の案件が同時に進む場合は心身共にハードに感じるかもしれません。
それでも無事にM&Aが成立し、相手の会社の方々と『一緒に頑張っていきましょう』と合意しクロージングが成立した時、そして、グループ参画後、一緒に成長を目指し、順調に進んでいると実感した際の喜びは何にも代えがたいです」
経営戦略部のビジョンとして、次のように明確に口にする田中。
「M&Aを通じてグループ利益への貢献はもちろんのこと、持続的にM&Aを行える組織になることを目指しています」
グループ各社とのシナジーを見極めてターゲットを選定。新たな領域への進出も
2023年から24年にかけて、SESの3社を含む計5社を買収してきたアイフル。M&Aを推し進める背景には、グループの成長に向けた課題意識がある。
「アイフルグループの連結利益は、アイフルのウエイトが大きい状況ですが、国内人口は減り消費者金融市場は緩やかな成長に留まる中、グループがさらに発展していくには消費者金融以外の事業領域の成長と、新たな領域への進出により利益を上げることが不可欠です。
M&Aについては社外から案件をご紹介いただき、また、能動的な動きで案件化していきますが、これまで良いご縁が重なり、5社のグループインが実現できています。こうして推進できているのは、取引先の方のご支援なくしては実現できません。
また、スピード感を持ってチャレンジする姿勢がグループ内に浸透している点が大きく、独立系の強みと思っています」
M&Aのターゲット会社を選定するポイントについて、今後の方針も絡めながら説明する田中。
「まずは対象会社がアイフルグループのリソースを活用して成長できるかどうか、そして、グループとのシナジーが見込めるか重要で、これらがあれば前向きにM&Aを検討します。
シナジーが見込まれるのなら新たな領域も柔軟に検討します。たとえば、2023年に買収したペット保険会社については、ペット保険市場そのものの成長が見込まれ、その中でデータ分析力やWebでの顧客獲得ノウハウが活用できるビジネスです。リスクはつきものですが、グループの強みを活かせる可能性が高いと判断した案件に対しては、積極的に投資を検討していきます。
もう一つのポイントは、『IT企業への変革』というグループ戦略に合致するかどうか。当社では200人以上のエンジニアを採用し、プロダクト改修や見直しでサービスレベルの向上を図る一方、多くのエンジニアを擁するSESの3社を買収してIT化を加速させています」
企業を分析する力やコミュニケーション力が養われ、人脈が広がる

経営の中枢を担っているとも言える経営戦略部の職場環境について、田中は「若手社員が高い視座や目線感を得られる場所」と感じている。
「経営にまつわる情報や会社方針を日々感じとりながら仕事を進める中で、高い目線で企業を見る力が身につきます。
また、M&Aは社内外のさまざまな部署、関係者の方々にご協力いただかなければ完結できません。各プロジェクトで多くの方々に調整、交渉することでプロジェクトの推進力やコミュニケーション力が養われ、人脈も広がります」
田中は、関連知識がほぼない段階からM&Aの業務に携わり、大きく成長した若手社員を例に挙げて語る。
「最初は『M&Aって何ですか』という状況でスタートしたメンバーが、1年程度で企業分析や企業価値算定作業、役員会提出書類を作成できるまで成長した社員もいます。このように、一人ひとりが不可欠な戦力として経営戦略部を支えてくれています」
経営戦略部では、メンバーたちのスキルアップを支える取り組みも進めている。
「M&Aのプロセスや業務内容に関し、個々のメンバーのスキルレベルを可視化する仕組みを考えており、メンバーにはセルフチェックからはじめてもらっている段階です。
その一方、業務で扱う案件はいずれも重要度が高いため、管理職が各案件に深く関わり、業務状況が常に見えるような体制にしています。経営層にはリスクが伴う重要な意思決定をしていただくため、付議書類はポイントを明確に、正確性・わかりやすさ・表現方法の確認など細心の注意を払います。
スタッフが相談しやすい環境を作るなどして、アウトプットの精度向上、個々人のスキルアップをサポートしています」
求めるのは上昇志向の強い人材。目先の努力を惜しまない姿勢が大切

経営戦略部として求める人材に関して、田中はスキルとマインドの両面で次のように率直に話す。
「即戦力としては、財務諸表などを理解できるような一定の会計知識・スキルのほか、チームワークに必要なコミュニケーション力が必要になってきます。学生のうちに出来ることとして、M&Aのプロセスに関する基本的な知識は書籍や動画等で学べますので、ご自身が気になる会社がどのような取り組みを進めているのか、その会社のIR情報(決算情報・決算説明会動画等)に目を通したりすることをおすすめします。
マインド面では、経営に関心・興味をお持ちの方、ご自身の市場価値を高めていきたい、と考えている方を求めています。
M&Aは相手・期限がある仕事でハードさが伴いますが、努力を惜しまず粘り強い姿勢、根気強さが大切ではないでしょうか。気持ちの強さ、ストレス耐性も持っていてほしいと思っています」
これから入社し、将来アイフルグループを支えていく方々に想いをはせ、田中はこのようなメッセージを送る。
「新たに入社して経営戦略部で働く方々には、『アイフルグループの成長に貢献できる』という確かな実感を持ちながら、一つひとつの案件にしっかりと向き合ってM&Aを推進してほしいと考えています。アイフルグループが持続的にM&Aを遂行できる体制を築きつつ、働くスタッフの成長を実現し、グループの企業価値向上に努めることが私に課せられたミッションでもあります。
経営戦略部はアイフルグループの今後の飛躍を支えていく重要な部署で、やりがいも大きいです。『グループと共に、自らも成長していきたい』と強く思っている方々との出会いを楽しみにしています」